遠方の相続の進め方

1 はじめに

ここでは,亡くなった方(「被相続人」といいます。)が遠方に住んでいる場合の相続手続について説明します。

2 相続人が一人だけである場合

まず,被相続人の相続人が一人だけの場合は,基本的には被相続人の財産はそのまま全てその相続人が取得することになります(ただし,遺言書がある場合は別です。)。この場合,その相続人は当然ながら単独で相続に関する手続を進めていくことができます。相続に関する手続というのは,例えば遺産の中に預貯金があるのであれば,その金融機関に対して被相続人の預貯金を払い戻しするように求めるというものです。

そういった手続の窓口は基本的には被相続人の最期の拠点地近辺にあることが一般的ですので,相続人が住んでいる場所によっては直接赴くことが困難な場合もあります。

このような場合であっても,相続手続ができないということはありません。なぜなら,手続は郵送でできることがほとんどだからです。わざわざ窓口に直接行かずとも,その手続に必要な書類を準備すれば郵送で手続を進めることが可能です。

3 相続人が複数いる場合

次に,相続人が複数いる場合は,遺言書がない限り,被相続人の遺産をどのように分けるのかについて協議(「遺産分割協議」といいます。)する必要があります。そして,協議がまとまれば,その内容を記載した遺産分割協議書を作成する必要があります。

遺産分割協議書には,相続人全員の署名と実印による押印が必要です。相続人が近場にいれば,ひとところに集まって協議し,作成するのは比較的容易なことですが,相続人それぞれが遠方に住んでいる場合にはなかなか難しいでしょう。

もっとも,協議の方法は自由であり,わざわざ相続人が面と向かって協議する必要はありません。また,協議書の作成についても内諾がとれていれば郵送で相続人間で回し,署名捺印をすることで完成させることが可能です。

4 郵送で手続を進める場合の注意点

このように相続に関する手続は郵送である程度進めることが可能です。しかし,郵送であるが故に注意すべきこともあります。

まず,1つ目ですが,書類に不備があった場合はやり取りの回数が増えたり,やり直しをする必要があったりすることです。特に遺産分割協議書については,一つの書面に相続人全員の署名捺印をするものであるため,不備があれば最初からやり直しをしなければなりません。事前に必要な書類は何かをしっかりと確認しておくほか,予備を準備できるなら準備しておくなどを心がけましょう。

次に2点目ですが,郵送だと時間がかかってしまうということです。普通郵便は土日祝日の配送はありませんので,届くまでに4日以上かかることもあります。手続を急いで進めたい場合には,速達郵便などの利用を考えたり,場合よっては直接窓口に行ったりすることも検討する必要があります。

5 最後に

相続に関する手続については,弁護士などといった専門家に依頼することも可能です。依頼の費用は発生することになりますが,手続を自分で進める必要がなくなりますから,時間や労力といった負担は大いに解消されることになります。

当事務所でも相続事件は多く取り扱っており,お客様のお力になれると自負しておりますので,お気軽にご相談ください。

下関 083-234-1436 黒崎 093-482-5536
下関 083-234-1436 黒崎 093-482-5536