【弁護士監修】相続人に「婚姻外で生まれた子(非嫡出子)」がいる場合の遺産分割と相続割合
はじめに:婚姻外で生まれた子(非嫡出子)とは?
法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子どものことを、法律用語で「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」と呼びます。日常会話やニュースでは「婚外子」と呼ばれることもあります。
それに対して、婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子どもは「嫡出子(ちゃくしゅつし)」と呼びます。
被相続人(亡くなった方)に非嫡出子がいる場合、遺産分割協議は円滑に進めることができず、トラブルに発展するケースが少なくありません。
まずは、非嫡出子の相続権についての正しい法律知識を持つことが重要です。
1. 婚姻外で生まれた子(非嫡出子)にも相続権はある?
結論から言うと、婚姻外で生まれた子であっても、条件を満たせば当然に相続人としての権利を持ちます。ただし、父親の相続か、母親の相続かによって扱いが異なります。
母親が亡くなった場合(母親の相続)
母親と子どもの関係は、分娩の事実によって客観的に明らかであるため、特別な手続きをしなくても当然に法律上の親子関係が認められ、相続人になります。
父親が亡くなった場合(父親の相続)
父親の財産を非嫡出子が相続するためには、父親がその子どもを自分の子であると認める「認知(にんち)」の手続きをしている必要があります。戸籍上に認知の記載があれば、法律上の親子関係が成立し、第一順位の相続人となります。
【注意点:認知されていない場合】
生前に認知されていない場合は、原則として父親の遺産を相続する権利はありません。ただし、父親の死後3年以内であれば、子ども側から裁判所へ「死後認知の訴え」を起こすことができます。これが認められれば、遡って相続人として遺産分割に参加する権利を得ることになります。
2. 嫡出子と非嫡出子の相続割合は「平等」
かつての民法では、「非嫡出子の相続分は、嫡出子の半分(2分の1)」と定められていました。しかし、この規定は法の下の平等に反するとして、平成25年(2013年)の最高裁判所決定および民法改正により、現在では「嫡出子も非嫡出子も相続割合は完全に平等(同じ)」となっています。
法定相続分の割合と計算例
現在の法律に基づく法定相続分の割合を見てみましょう。
|
相続人 |
法定相続分の割合
|
|---|---|
|
配偶者(本妻) |
1/2(50%) |
|
子ども全員(嫡出子+非嫡出子) |
残りの1/2(50%)を人数で均等割 |
【計算例:遺産総額が6,000万円で、配偶者、嫡出子2人、非嫡出子1人がいる場合】
- 配偶者(妻):3,000万円(全体の1/2)
- 嫡出子A(婚内子):1,000万円(全体の1/2×1/3)
- 嫡出子B(婚内子):1,000万円(同上)
- 非嫡出子C(婚外子):1,000万円(同上)
このように、本妻との間の子どもと、婚姻外で生まれた子どもは、全く同じ金額を相続する権利があります。
3. 非嫡出子がいる遺産分割で発生しやすい3つのトラブル
法律上は平等とされていても、現実の遺産分割協議では感情的な対立が生じやすくなります。
① 被相続人の死後、突然「見知らぬ子」の存在が発覚する
最も多いのが、父親が亡くなり遺産分割のために戸籍を収集したところ、家族も知らなかった「認知された子」の存在が初めて発覚するケースです。残された家族は精神的なショックを受け、遺産分割手続きを進めることに前向きになれないことがあります。
② 全く面識がなく、遺産分割協議が進まない
遺産分割協議は「相続人全員」で行い、全員の合意(実印の押印と印鑑証明書)が必要です。非嫡出子を外して遺産分割協議を行うことはできません。
しかし、全く面識のない相手に手紙を送って話し合いを求めるのは非常にハードルが高く、無視されたり、連絡先すら分からなかったりして手続きが頓挫してしまうことがあります。
③ 感情的な対立から「1円も渡したくない」と揉める
本妻やその子どもたちからすれば、「一緒に暮らしたこともない相手に、これまで築き上げた財産や実家を平等に分けるのは納得がいかない」という感情を抱くのは無理もありません。一方で非嫡出子側も「法律で認められた当然の権利だ」と主張し、協議が平行線となり、争いに発展することがあります。
4. トラブルを未然に防ぐ!生前にできる相続対策
ご自身に認知した子どもがいる場合、ご自身が亡くなった後、残された家族同士が争うことのないよう、生前にしっかりとした対策をしておくことがご自身の責任とも言えます。
遺言書の作成(公正証書遺言)
誰にどの財産を相続させるか、明確に記載した遺言書を作成しましょう。「本妻と嫡出子にすべての財産を相続させる」といった内容も可能です。ただし、遺言書を作る際は、後述する「遺留分(いりゅうぶん)」に配慮する必要があります。当事務所では「公正証書遺言」の作成をおすすめします。
遺留分(いりゅうぶん)対策
非嫡出子にも、法律上最低限保障された相続分である「遺留分(本来の相続分の半分)」があります。遺留分を侵害する遺言を残すと、死後に非嫡出子から遺留分侵害額請求を起こされるリスクがあります。これを防ぐため、あらかじめ非嫡出子に遺留分相当額の現金を残す旨を遺言に記載しておくことが有効です。
5. すでに相続が発生して揉めている場合の解決方法
もし何の対策もされていない状態で相続が発生し、非嫡出子との遺産分割協議が必要になった場合は、以下の手順で進めます。
① 弁護士を代理人として交渉する
当事者同士で直接連絡を取ると、どうしても感情がぶつかり合い、話し合いがまとまりません。弁護士を代理人に立てることで、相手方への連絡や交渉をすべて任せることができます。法的な根拠に基づいた提案を行うことで、できる限り円滑な合意を目指します。
② 遺産分割調停の申し立て
話し合いでの解決が難しい場合や、相手が連絡を無視し続ける場合は、家庭裁判所へ「遺産分割調停」を申し立てます。調停委員という中立な第三者が間に入り、双方の主張を調整します。調停が不成立となった場合は「審判」に移行し、裁判官が遺産分割の方法を決定します。
複雑な親族間の相続トラブルは「弁護士法人ラグーン」にご相談ください
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