連絡が取れない姉との間で遺産分割(調停・審判)が成立した事例
事案の概要
依頼者は,約10年前に父を,その後に母を亡くした方でした。父と母の間の子どもは,依頼者とその姉の2名のみでした。通常であれば,依頼者と姉の2人で父名義の財産と母名義の財産を分け合うための協議を行うのですが,依頼者は姉と約10年以上も連絡をとっておらず,連絡先も住所もまったく分からない状態のままとなっていました。他方で,父の遺産には土地や建物などの不動産があり,遺産分割は済んでいないものの依頼者は固定資産税を何年間も支払い続けていました。加えて,一部の遺産には未登記の建物も含まれていました。依頼者としては,父の遺産の土地や建物を処分したいこと,これまで支払ってきた固定資産税のいくらかを姉に負担してほしいという希望をお持ちでした。
事件処理
⑴ ラグーンでは,早期に遺産分割を行い,父の遺産である土地や建物を売却処分し,その代金を姉と分割する「代償分割」という方針で事件に着手しました。
⑵ まずは,相手となる姉の現住所を調べるところから始めました。
弁護士は,「職務上請求」という手続により戸籍謄本,除籍簿謄本,戸籍附票,住民票などの証明書類を取得することができます。実際に,依頼者,父,母の戸籍を辿り,姉の現在の本籍の情報を入手し,住民票を取得することで姉の現住所を突き止めました。
しかし,弊所より何度か遺産分割協議の申入れの手紙を送っても,全く音沙汰がない状態となりました。
⑵ 即座に,遺産分割調停を申し立てました。
調停手続は,当事者同士が直接対面することなく,調停委員を介して話し合いで物事を解決する手続のことです。しかし,依頼者の姉は調停手続に出席することはありませんでした。
本来,遺産分割調停で話し合いがまとまらなければ,「遺産分割審判」という手続に移行します。審判では,当事者の証拠や主張などから,裁判官が遺産分割の方法について一方的に判断を下す手続です。ただし,裁判官の判断によっては,遺産について依頼者と姉が1/2(法定相続分)ずつ共有するという結論となることが予想されました。その場合,依頼者は固定資産税の支払いから逃れられないままとなってしまうだけでなく,遺産を処分するためには,共有物分割調停・訴訟という別の法的手続を取らなければならなくなる可能性が生じました。
⑶ そこでラグーンでは,遺産となっている不動産の現地調査を綿密に行い,市の税務課にて家屋台帳図面を確認して,現存する未登記の建物が父の遺産であること,不動産会社と連携し,遺産を売却処分することこそが相続人である依頼者と姉が公平な経済的利益を得られることを説明し,調停条項案の提案を重ねるなどして裁判所や相手方に対して書面で主張を行いました。この間,姉からこちらの主張や提案に対する回答や反論などはありませんでした。
結果として,裁判所からは当方の提案が当事者にとって衡平であると認められ,「調停に代わる審判」(家事事件手続法284条1項)により,「不動産を依頼者が取得し,売却代金の一部を姉に支払う」という内容で手続が終結しました。
弁護士の目
遺産分割では,協議によっても,調停によっても,果ては審判によっても当事者同士の意向が激しくぶつかり合うことがあります。今回のケースでは逆に,「相手が全く反応を示さなかったために当事者では協議のしようがなかった」という事案といえるでしょう。
1つずつ手続を踏み,関係者と良き協力関係を構築しながら,粘り強く裁判所や相手方への説明を行うことで,結果として依頼者の希望する結論に至ることとなりました。
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